旅立ち

12月に入って・・・師走という文字に追いかけられるように足早に日々が過ぎて行きました。
展示会のあった天神の街、夕闇に点滅するクリスマスツリーが「もう、今年も終わり…」と急かせます。
何時からこの季節を忙しなく思うようになったのだろう、うきうきと行き過ぎる若者達をうらやましく見送りました。
最後のギャラリーだから・・・と夫も最後までくらいついて描いた絵を並べました。
深く静かな空気が漂います。
展示会後半、福岡で夫も合流!二年余りのスランプを抜け出て夫の顔が輝いています。
いつものメンバーが今度は博多の街で晴れやかに飲みました。

福岡「ギャラリーおいし」は私が三十年前、初めての人形の展示会を開いた場所。
若い結婚は思わぬしがらみに満ち閉塞感に包まれていたあの頃・・・見かねた友人の後押しで初めての個展。
その展示会のために十四年ぶりに乗った列車の中、移り行く風景をひとり見入っていたっけ。
あれが今の私の出発点です。
縁あったギャラリーの夫人、早々と逝ってしまったけれど・・・福岡の街に入ると今でも彼女の言葉に包まれます。
凛とした忘れえぬ女性でした。
ここまで歩いて来て人生なんて思ったより早く駆け抜けていくものらしい・・・
私もとうに彼女の年を過ぎました。

福岡から帰り着くともうすぐ日本を出る娘が待っていました。
昨年久しぶりの母娘の旅先パリで見つけた遅咲きの恋・・・一年後海を渡ってフランスの人になります。
娘は若い頃思い出のかけらを置き忘れてきた街に戻ります。
10年近く住んだ神戸の部屋を空にして・・・もうあの部屋はなく前に進むしかない。
愛を見つけた喜びの後に彼女にはたくさんの別れが待っていました。
人生の半ばまで日本で暮らし、幾つもの愛に支えられていたんだ・・・今更過る想い。
けれど全部引っ提げて人生は進めない、娘は大事な宝箱にしまって昨日旅立ちました。

さあ、おセンチも終わり。世の中師走なんだ、私も仕事開始!休むわけにはいかない。
クリスマスには一年分の想いを抱えて不良老人たち?がやって来る!
幕を引くまで私は元気で「私」をやります!
皆様良いお年を!

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