月を見ながら・・・

ただ今!
イスタンブールからポルトガルまで5週間・・・ヨーロッパの秋を漂って昨夜帰国しました。
主居ぬ間に庭には雑草に紛れて萩やホトトギス・・・秋の花がこぼれ咲いていました。

まだ浅い春、日南の友人夫妻と一泊どまりで出かけた先のスペインバルで飲んだ時・・・
友人夫H氏がぽつりと「羊子ちゃんの言ってたポルトガルの鰯、食べてみたいなぁ」
すると姉のような友人Sが突然すくっと立ち上がって手を広げ「旅に出よう!多分、最後と思う・・・私達夫婦70才記念に!」
何と経費全て彼らが持つという!
ただし「羊子ちゃんが何時もしてる旅をこの四人一緒にしたいの!」それだけが条件です。
「うそ~!本当?!」
余裕のある彼ら、でも様々な事があって・・・それが万感の想いをのせた二人の私達夫婦へのアプローチでした。

目の前の「旅!」というご馳走にいやしい私は「のった!」と喉を鳴らしました!
それから猛烈に仕事をこなし、合間に5週間の旅の手配!
何せ歩くの好きじゃない二人をどう楽しませるか・・・これが今回の私の仕事!
そもそも旅好きではない夫は「台風が気になるよ」と気乗りしないまま出発。

ところが・・・です!旅が始まった途端、夫が・・・発見された元日本兵のように何時もよろよろ着いて来る彼が
今回は何時も6,7m先をたったか歩くのです!
「もっと二人に合わせて!」と言えば「僕は先発隊なんだから!」と私を睨みます。
(勝手なもんだ!あんだけ渋ってたくせに)
何時もの私の旅のペースを彼らに合わせペースダウン・・・
ともあれ、わが夫T氏も友人夫婦も異国の街をいろんな人と巡り合いながら元気で徘徊しました。
共に食い物にいやしい我々・・・幸せ笑顔でよく食べました!よく飲みました!

旅が始まれば自由な私の時間・・・月を仰ぎ見ながら巡ります。
薄い眉月・・・イスタンブールでまたエミンと遭遇、不思議です。
パリのサクレクールの階段で若者の歌に合わせて私も踊りだす。
ローマ、テェベレ川ほとりで聞こえたアフリカンドラム、
扉を開けて覗けば地から湧き上がるリズムに激しいダンス・・・皆で講演の練習らしい。
もう堪らない!私にもお誘い・・・もちろん飛び入りしました!
皆と並んでタタタタタッタ~ン!もうへろへろ・・・give up!
「来週から稽古に来れば!」
私達のようなまん丸い満月をトラステェベレの橋の上から眺めたね。
マドリッドで出会ったオランダの若者リック達・・・H氏に「僕にもパパと呼ばせて…」
私達の笑い声が響いたマイヨール広場、見上げればもう三日月。
ポルトガルでほろ酔い、4人で歌いながら歩けば現れた一人の男「もっと歌ってくれよ」
わかりやした!歌いましょう!この中年リスボア男と我々の歌比べ!
乙ですぞ、深夜のリスボンで私「東京流れ者」にわが夫「山谷ブルース」H氏もお得意の「君恋し~」歌ったっけ。
最後の夜も行きつけのジョゼのいる店でドイツの彼らと歌合戦!お酒ががんがん並べられて
お陰で帰国日、二日酔いが止まりません。
最後の日、旅立つリスボンの空港まで乗ったタクシーの運転手・・・ロシアに圧迫されたウクライナから出稼ぎという。
世界中何時も何処かで戦いが・・・道すがら話交わした彼の言葉が染みわたる。

友人のS嬢・・・十年前、初めてのヨーロッパで体調を崩して「二度とない・・・」と言ってたはずの欧州の旅を今年敢行!
「いろんな街へ行って楽しかった!でも何より・・・世界のいろんな所で人がいろんな想いで生きている。それが愛おしい・・・」
旅の終わりに彼女がしみじみそう呟いた。

そうなんです!私の言ってる”旅”ってそれなんです!
いろんな場所でいろんな人が笑って、泣いて、どうしようもない怒りも秘めて・・・いろんな想いで生きている。
そんな想いをつないで歩く・・・この染みわたる想いが好きで私は旅をする。

ああ、何時までできるのか・・・あの雲のように流れて、月を仰ぎ見ながら歩くこんな旅。
「羊子ちゃんなら・・・まだまだできるよ」そう思いたい、思ってます。
人生は愛しい時間でつづられています。
終わりの日までそんな愛しい想いを頬張ります!

さあ、日常の始まり!ごめんね・・・預けっぱなしの猫のミュウミュウがすねて甘えて柱を引っ掻きました。

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