赤いグラス・・・

ヨーロッパの秋を漂って・・・帰り着けばまた猛然と仕事!
ぎりぎりまで遊ぶのが私の流儀、余裕なんてありゃしない!神戸の展示会がすぐそこに・・・
けれど先ずはスーツケースに詰め込んだ旅のかけら・お土産を身内に配分です!

何時の間にか私と夫の二人から広がった家族たち・・・
仕事の合間に四人の子供、その連れ合いに孫まで夫々の誕生日を携帯に入れて毎月チェック、もうすぐクリスマスも来るし!マンマは大忙し。
顔を思い浮かべてプレゼントを選びパッケージ・・・お財布は軽くなるのになぜか幸福な気持ちに。

末娘が以前我が家で飼っていた大型犬のトトとノアの事をブログに書いていました。
あの頃、まだ子供らの三人ほどが家に残っていてその犬たちに13匹の猫・・・
おまけにリビングには揚羽やトンボが紛れ込んでヤモリがドキドキしながら壁を伝い
夏など小さな蟹が廊下を歩いていましたっけ。
河川敷に立って私が「おっちび!」と声を掛ければ草むらや路地から一斉に我が家の猫達がぞろぞろ犬の散歩について来て・・・
誰かがやって来てはデッキで即ビール!いつも大量に食事作って「ああ私、給食小母さんみたい・・・」なんて言ってたなぁ。

大きな家にもうお馬鹿なトトもずる賢い甘ったれノアもいません。猫も新米のミュウミュウだけ・・・
アトリエにどっぷり漬かって夫とゆったり二人・・・今の暮らしを楽しんでます。
けれどあの頃いつも誰かが怒ったりそれを笑ったり・・・あんなに騒々しく忙しかった暮らしの「幸せ」が懐かしく思い出されます。
この家はあの頃の大きな笑い声を吸い込んで今は心地よくまどろんでいるようです。
今のこの気ままな暮らしはとても居心地良いけれど
冬のぬくぬく寝床の中で「後5分・・・あぁ、何時になったらお弁当作りから解放されるんだろう」なんてぼやき・・・
あの頃の私はぴかぴか幸せ現役だった事に気付いていません。

今は巣立った子供らがそれぞれ「核」を作りながらすったもんだ人生の真っただ中!
DNAはしっかり受け継がれ我が家伝統・・・ちっちゃな溝も見逃さない!皆それぞれしつこくパートナーに絡んでのキャッチボール。
良いんだよ、それで。愛は確かめ合わないと育っていかないから・・・

振り返ればすぐそこに私の恋もあの頃の行き場のない怒りも迷いもその鼓動すら感じられるのにもうここまで歩いてきた。
けれどその認識が薄いまま崖っぷち間近で現役の”私”がまだのほほんと歌を歌ってます。
おい、おい、もう陽が沈みますぞ。ほんと、きれいな夕陽ねぇ・・・
きっと人はこんな風に時を重ねて行くんだろう。

若い頃、誕生日にある素敵な年上の女性からの贈り物…アンティークな小さな赤いグラス。
「夕陽が薔薇色に染まった美しい日・・・もうこれで良いと思った日に毒をあおって下さい」
彼女らしい贈り物だった。そして彼女らしく老いた姿を見せぬまま雲隠れ・・・
だから私も探しません。赤いグラスを見るたびに彼女のことを想います。
美しい夕陽に染まりながら私はそのグラスに何を入れるのだろう。
やっぱり旨い酒か!

へろへろで神戸へ荷を出して・・・今宵はちょいと飲みました。

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