エスケープ入院!

八月に入ってわんさか雑務を片付けて・・・ようやくたどり着いたバカンス入院!
一昨年の左足骨折の際の多ボルト抜釘手術は一年間体調調節し、今年になってようやく許可!
夫が手に入れた野坂自選の署名入りの本はこの時のために読まずにとって置いた。
赤い革表紙で活版印刷でくっきり文字を打った贅沢な本は寝転がってなど読みたくないから。
そしてまたまたフランス語3か月分持ち込んで頭ウニにして楽しみました!

大きな窓が病院のリハビリ室、食堂をぐるりと巡って大きな青空と夏の山と流れる雲。
手術と言ってももう骨は繋がってるんだし、痛みなんざ大した事ぁないし・・・
二週間毎日リハビリ付きで、雑務シャットアウトでたらりん好きな事やってエスケープ入院。
何からエスケープ?来月福岡で個展間近のイライラ夫からのエスケープです!
毎日花をチョッキン・・・の日々は一転して「描けない!間に合わない!」(十分間に合いますよ!)
このふた月ほどずっと彼の不機嫌ヒリヒリモードは見苦しいほどにマックス。
腹が座ってないんですね、この男。
70間近・・・ここまで来たら描けても描けなくともぐっと堪えてその中で描く事を楽しむんです!
「もうジタバタするのはよして!この年になったら自分の力量の中で遊べよ!」私の一括です。
あなた、どれほど私に厳しかったか!!お陰で私は鋼のように強靭に仕上がりました。
けれどパートナーに要求度の強い奴ほど自分に甘く翻弄されてます!
彼、私の手術の事などこれっぽっちも頭をかすめもしないらしく
「こんな時に僕2週間も自分で料理をするの?」わざとらしいため息ばかり。そう、可愛そうなのは自分なのです。
(だから冷凍庫にいっぱい料理詰め込みました!)
そして私はこれ幸いと入院バカンスでエスケープ!

私の入院した設備の良いリハビリテーションは3分の2がのんびりお惚けのお婆ちゃん達です。
同室のベッドから「遊んで…」
暗黙でこっちをチラチラ見のお婆ちゃん達に私は読書・勉強タイムをぱたんと閉じて
「さぁ、お守りタイム!」と言えば皆待ってましたとにっこり笑う。
昔の駆け落ち話を聞いたり、一緒に懐かしの歌を歌ったり・・・現役を終え安らぎの人達!気持ちが解けますね。
特に97才のT嬢?は目をいたずらっ子のようにキラキラさせて私に「まだ秘密があるでしょう?」だって!

きめ細やかな介護があり、毎食後、私が冷やかす「おやつタイム?!」山ほどの薬を飲んで
細く長~く伸ばされる寿命・・・でもこれって幸せなのかな?いろいろ想います。
健康で意識がはっきりして生活にゆとりがあればそりゃあ幸せですよ。
でもね、でもね・・・一歩病院を出ればその人の背景は様々です。
「92才のマドモアゼル」って映画を観ました。
自分でできる事をひとつづつ消して・・・ついにある日自分の逝く日を決める…ある老婦人の物語です。
人生を自分らしくその年まで生きれた人ならば自分の意志で「終わり」を決めても良いのかも・・・と私も思います。
私の祖母がそうでした。
夏蜜柑がゆさゆさと揺れる初夏の美しい黄昏・・・40年前90になった祖母は自分で逝きました。
明治生まれの気丈で寡黙だった祖母・・・
「もう、いい…」人生を全うした祖母らしい、悲壮とは無縁のそれは透明な意志だったと思います。

人生肯定派の私です。
今も生きる事を充分に楽しみ、晩年をマシュマロのように我儘でぼんやり可愛くなっていくのも良いか、
長命だったら自分で「終わり!」でも良い!・・・最晩年の自分の舞台が見え隠れしました。

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