手足切断のマリオネット…

大阪の展示会から始まった体調不良…極めつけが強烈な眩暈…恒例となった日南詣での最中です。先月からひと月経って、友人の残された夫H氏の誰にも会わない暮らしに「もう、行かなくては…」が先行していた。私の場合、この「やらなくては…」が何よりも先行してしまう。もう大丈夫!…の気の焦りと横着さで何時も前に進んで来ているらしい。日南で二日目だった。皆でちょっと遠出をして買い物を済まし、男共は夜に向けて昼寝をするという。良かった!私自身ひどく疲れて和室の戸を立てた途端、爆睡している。隣室で男共が起きたらしく声が聞こえたので私も目を明けた。あれ?何…天井が回ってる!すると天井も吊り下げてあるランプもくっきり見えながらぐるぐると高速で回り始めたのだ。何か変…しばらくその回転が収まるまで隣室で鳴りを潜め、表のリビングに出て行った。何もでき着ない男三人「Yちゃん…目が変だよ」大丈夫、大丈夫…と言いながら私は夕餉の支度に取り掛かった。一緒にやって来た夫の友人独り者のHは今宵の家飲みがまた楽しみなのだ。買い物は遠出の帰りに済ませてあった。もう私が作るしかないのだ。気づかれぬよう手でカウンターを掴みふら付きながら料理をすればじっとり脂汗が出てきている。さすがに我が夫は心配らしく時折台所にやって来ては小声で「大丈夫?」と囁いてた。予定通り幾つもの料理がテーブル一杯に運ばれれば夫もH氏も「もう、いいよ、十分だよ!」H氏にとってはひと月ぶりのまともな食事なのだ。Sの死から1年が過ぎ…11キロも痩せたというその彼もよく食べてくれた。ようやく崩れるように座れて…自分自身ほっとした時にもう一匹の彼奴、Hがぐっと私の前に皿を突き出して「美味しかった!Yさん、おかわり!」むむ…流石に「それ…自分で出来るでしょ?」「あぁ…分かった」と彼奴は立ちあがったけど…要領悪く、結局は私が行く!この男…根が見事に真っすぐな良い男なのだが…以前酔いながら我が夫に誉め言葉のつもりか「お前は女房躾に成功したんだよ…」と言った事がある。「聴き捨てならねぇ…躾だって⁈誰が誰を躾るって?女も男も平等なんだよ!こちとらお互い切磋琢磨でぶつかり乗り切って夫婦をやってんだ!」と私がほざいた事がある。その話をすればパリに住む娘からため息と共に「サスキュウ…」という言葉が返ってきた。「サスガキュウシュウオトコ!…」の短小形⁈らしい。なるほど…ね。今時…「だからお前は結婚できなかったんだよ!」ですぞ。残念ながら彼が藻掻けばもがくほどサスキュウ⁈のぼろが出ます。あ~あ、良い奴なのに!

さて我が体調不良も此処までくれば病院に行かざるを得ない。耳鼻科で「まっすぐ立てない状況…」との診断で薬が出ても…あまり効果なく、次は脳外科でMRI。以前も過労から意識が飛ぶようになって此処を訪ねている。「頭の中はきれいです…以前もそうでしたね。過労?」こちらから出た薬でも頭をがちがちに締め付けているあの感覚が取れない…。それで最後に訪ねたのは「…接骨院」なのです。昨秋以来まだ若手の彼の東洋医学に基づいた理論を聞きながら受ける施術に感嘆していた。ちょっと場所が違うけどと躊躇ながら訪ねて…正解でした!頭ががちがちになっていて…MRIには毛細血管までは映らないらしい。それから受けた施術に驚嘆!私が「うぅ…初期的拷問…」と声が漏れたほど…頭はがちがちに固まっていたのです。一回目で頭のきっちり巻かれた紐?が解け…何と世の中の爽やかなことか!この所、アトリエ入室禁止を言われていた私はデッキに置いたブランコで揺れるがまま…あの春以降、梅雨の晴れ間の涼風を満喫したのです。「ちょっとひどいから来週は一日おきで…」との事で今日はその2回目。その整骨院が開く前に着いて…まだ誰もいずゆっくり彼の講義?を拝聴できた。とにかく東洋医学の理論は体の全てが繋がっているらしく…その因果関係で施術が行われるのだ。その日は私の頭に籠った熱があるらしく、その頭部に初期的拷問⁈の施術で頭部から発汗!施術の翌日の爽快感たるや体の中をそうそうと風が吹き抜けるような快適さを取り戻したのだ。だから…入室禁止⁉となっていたアトリエでやりたかった「私と電次郎のマリオネット」のやり直し!当初、きちんと作りたい…と思いこみで作ったマリオネットは関節球体型!関節で曲がるのだが糸でつるし動かすにはぎこちない!しかもきっちり粘土で作られたボディは糸で操るには重すぎた。結果見えている手先と足首から先までを残しボディも上半身以外切断せざるを得ない…せっかく作ったのに…と躊躇のまま体調不良が相まって大阪の展示会から帰ってきたまま寝かせて置いたのだ。あれ以降…このニ三日の快適さ!結局…切断、やりましたよ‼苦労して作った関節部分、粘土の下には木材…全部切り落としました。肌色の布で胴体も腕の関節、足の関節も…あれほど時間かかったというのに、今回の繋ぎは何と簡単な布で作って綿詰めで仕上げ…重量半分以下になって、出来上がればよく動くじゃないか!マリオネットの仕組みも思い込みで作って結果回り道…でもこれで分かりました!何れ電次郎の方は彼女のもとへ…一人ぼっちになった私のマリオネットには…そうだ、相棒の夫のマリオネットを作ろうじゃないか!ただ…今じゃないぞ!としっかり自分へ言い聞かせはしています。

この5月で夫は77歳、6月で私が76歳なんて!すごい年齢を私達は泳いでいるわけだ。「あのおじいさん…」とテレビを観ながら拓郎氏が言いかけて「ひぇ~っ!俺と三つしか違わなかった!」と声を上げた。自分の年齢に驚いたのです。どこが5、60代と違う⁈私達の中では一緒の線上にいる感覚が拭えないのです。夫の友人のHは「僕もお爺ちゃん!ヨーコさんもお祖母ちゃんなの!」と力説しますが…「お前だけだろう!あたしゃ違う!」と嘯く。私の中にまだ愛の疼きさえ健在です。夫の方も同じく…夕刻迫れば仕事(私達にとっては…)二人仕事を終え、私は夜のために美味しい酒の肴を作り、夫の「あぁ、良いですねぇ…」で夜の始まり。二人映画やドキュメントに浮遊し…夜のとばりの中で一日を終える。子供らが巣立ってからのこんな充足した時間をずっと過ごしてきた。もうそろそろ終わりが近づいている事は百も承知なのに…二人ともまだまだ人生をむさぼり食いたいと思ってる。私達は老成を知らぬ、まだ生な人間!なのです。これで良いさ!これからも世に憂い、気炎を上げ、愛の疼きを堪能する。

ここまで書いて…ようやく長かった体調不良に見切りをつけ、元に戻りつつある自分を確信‼元気になった来月は何をしているのだろう⁉

 

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