二つの時間・・・

やっぱり展示会はお祭りだな⁉仕事終わり!と手を離して、後は一日でリスト作りと搬出のための梱包・・・手慣れたもんです。ただ20年前ってこんなに息切れしてたっけ?締めは展示会で何を着るか?これも大変です。2週間天気予報とにらめっこしながらスーツケースに服の出し入れ・・・ようやく全てが終わって、翌日早朝空港へ向かえばあの懐かしい神戸の魔女連の顔が浮かびます。コロナで4年もの間ぷつんと切れた糸をまたリセット・・・頭の中は4年もの空白はないのです。

けれど4年は長い空白でした。私はその間高松で新たな熱帯魚たちと出会いさんざめいていました。4年前・・・どっぷり秋の気配が降りた夜の神戸で展示会を引けた時間まで皆待ってって色とりどりの熱帯魚群が繁華街の路地筋をぞろぞろ練り歩きながら小さな店に陣取ります。もう何年になるのだろうか・・・皆神戸の展示会で出合った熱帯魚たち、もうそれぞれに馴染んで年齢も背景も違う皆が同窓会気分!コロナになる前の晩秋・・・I子はんの話に私達は笑い転げました。独特のお洒落!それはキュートな方で・・・ワイズの黒いパンツの上にバレーのチュチュを着けているのです。「I子さん、何時からそんなファッション⁉」と聞けば「あんたの帽子買ってからや・・・」そうパキンと笑うのです。ただ者とは思えない、あまりに魅力的なこの熱帯魚⁉に「I子さんて何なさってる方?」と聞けばこれまたにっかと笑いながら「あんたの帽子買うためにパートしてんねん」と。夫は普通の公務員、ならば彼女は自分の好きなことは自分で賄う!彼女はパートして得たお金で好きなガーデニングのためにイギリスを訪れ、70過ぎてもクラシックバレーをやってるという。お見事です‼本当に素敵な後ろ指さされ組!

神戸に来る度、静かにずっとずっと何時も寄り添ってくれてたSさん。皆Sさんを私とセット!と認識していて「もうSさん、来てる⁉」と聞いてくる。出会いは神戸で初めての展示会だった。「私、これにします。」娘さんと二人見えていて・・・彼女には少し派手目に見えるグリーンの個性的な帽子を手にしていた。娘さんは別のものを勧めているようだった。「ううん、良いの。これを被れるよう元気になります!」と彼女は言いきり、それを買って帰っていった。多分・・・ご病気になられて帽子が必要となったのだろうと察し、あれから私はその後髪の毛が生えるまで被れそうな帽子を送ったのが彼女との始まりだった。この頃独り旅をするようになっていた私はその展示会が終わってすぐに旅だった。ただしこの時は長年の友人が一緒だった。私が自分探しでもがいていた頃、彼女が窓を開けてくれた・・・恩ある友人だった。元来独り行動派で、女友達といえど一緒に町歩きなどした事のなかった私だったが「家族がYちゃんに着いて行けって・・・」世話になっている彼女を断れず、戸惑いながらの出発が初めての”女友達でも楽しい!”旅となった。彼女にもまた重い病から治って欲しい友人がいた。私達二人は旅の間中、教会を見つければ互いの友人のために祈りに行った。そして異国の見知らぬ街から彼等へ葉書を書き送った。Sさんはそれをとても喜んでくれたらしい。それを切っ掛けに何時もSさんからお手紙を頂くようになった。夏には「無理なさるから・・・」と冷たい贈り物、クリスマス前になると毎年必ず彼女が焼いたシュトーレンが届いた。あれから15,6年・・・もう家族の誰もが、友人達さえ「あぁ、Sさんね」と知っていた。神戸に着いて・・・夫からの電話「Sさんから手紙が来てるよ・・・」嬉しくてその場で開封を促し読んで貰った。「今年で卒業させて頂きます・・・。」当然現れると思っていたSさんが来なかった。次々にやって来る懐かしい顔ぶれさえ「Sさん、もう帰ったの?」催促するようで躊躇われたが電話をしても応答がない。あれから帰り着いて電話しても応答がない。家族と一緒だから誰もいないとは思わないけれど多分私の電話番号が除外されたのだろう。もしかしたら・・・不安と寂しさが募った。

黙って店を人に譲った「さんさろ」のママ、I子はん、Sさん・・・この神戸の街には忘れ得ぬ女達が一杯いるのだ。私の中でこの街からまだ4年の時間がすっぽり抜けて以前の記憶に直結していた。街をそぞろ歩けばまた皆に会えると思っていた。その街で暮らす人々にもコロナで4年という時間に阻まれていのた。今回会えた方々も、もう何処へも寄らず真っ直ぐ家路に向かった。そう言えばもう彼女たちの前に80という目印がちらほら見え隠れしている。田舎の海辺で仕事にのめり込んで終わったら旅に出て展示会という花火を打ち上げ天を仰ぐ・・・年齢は頭上を掠めていくだけ、何も変わっていないと私は思っていた。でも今回、懐かしい神戸の街に来て70過ぎての時間の重さを痛感した。

私は時間を逆流・・・2年前、コロナを注意しつつ都会を遠巻きに高松で展示会を!そこで嵌まってしまった。ギャラリーの肌合いも空も街も・・・だから春、秋と年2回もをまた続けて2年‼ 何時も間にか馴染んだ温かなお客様・・・いえいえもう友達です‼ 馴染みすぎて別れがたく・・・昨年秋の展示会でこのまま展示会のタイトル頂いて「ぬばたまの夜会」結束です!熱帯魚に深海魚、回遊魚に淡水魚・・・岩陰から除く鰯嬢まで現れて盛り上がりました。それで今年4月、私にとって久しぶりの神戸での展示会に皆が来てくれた!初日ぞろぞろ現れる色鮮やかな魚たちに遅れて・・・大御所の深海魚!色鮮やかなブルーのコートをひらひら踊りながら現れちゃった‼もう大盛り上がり‼あの日、お財布置き忘れて、随分経って慌てふためいて帰ってきた回遊魚!その夜の楽しかったこと・・・神戸在住の淡水魚姫の行き届いた気配りで素敵な中華で乾杯‼今度は飲めない艶やかすぎる魚たち引き連れて私お勧めの安~い居酒屋に行けばどっちも違和感マックス!あそこでまたいろんな話したなぁ。歳も背景も皆大きく違うけど、一人ひとりが何て人に温かい・・・そして、皆身の丈一杯に人生を楽しもうとしている同じ人種、粋な後ろ指さされ組なんだと。そんな別れがたい夜、街角でそれぞれに別れればちょうど12時!シンデレラ時間でした。あの日皆待ってた鰯嬢?も翌日素敵な鱗で現れました。

神戸の街でそんな温かさと切なさと・・・二つの時間を行き来しました。

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