早すぎたミモザの春に・・・

能登の寸断され割れた大地・・・まだ水も供給されてないらしい。ままならぬ復興の展望も見えぬまま、ウクライナもガザ地区も置いてきぼりで社会は動いています。ロシアのナワリヌイ氏が投獄されたまま殺されました。アメリカでは問題だらけのトランプが優勢らしい。2年前、突然のロシアの侵攻に毅然と立ち向かい、各国の戦争の支援疲れか、あれほど賞賛を浴びたウクライナのゼレンスキー大統領も援助が滞り失速し始めた。ガザ地区の200万人もの人々は南に追いやられ出口を塞がれたままイスラエルの攻撃を受け続けている。ホロコーストで深い傷を負った民が建国のために彼等を銃で追い出し、今また攻撃しているのだ。憎しみが生れないわけはない。何故誰も止められない・・・世界は何処に向かっていくのだろう。

平和な場所に身を置いてる私は・・・平和な日常にいます。1月のイベントが過ぎて今年の活動の始まり‼この冬眠?の季節に材料購入に動かなくてはならないけれど・・・神戸展示会を何処でするかの流れでバタバタとまた遠出!東京ではそれぞれ友人二人に会いました。

ライターの友人N女史と日暮里で待ち合わせ、末娘のお勧めのインド的デコラなカレー屋で合流。目力の効いた黒服の支配人に「今呑んじゃ駄目!」と怒られながらお勧めの紅茶をごちになったっけ。友人D女史は昨年の今頃・・・別れた夫の葬儀の後の始末に明け暮れていた。彫刻家として結局世に出切れなかった不遇な夫・・・彼の空回りする自尊心はやがて歪になっていって行ってしまったのだろう。数年前、情ある彼女も遂にそんな彼とその縁を断ち切ってしまったのだった。彼の死後、残された夥しい巨大な石と作品と道具達。高齢となっていた彼の兄弟達はもう動きが取れず・・・だから結局元妻の彼女が生業としている染色の傍ら、遠く夫が住んでいた家まで今もその片付けに奔走している。そんな事柄をぽつりぽつり語る彼女の温かな呟き・・・愛ある人だ。

東京を後にして神戸へ移動・・・「ぬばたまの夜会」若頭?M嬢が待っててくれた。「神戸は任しといて下さい‼」お客様なのにこの人の面倒見の良いのも徹底してる。寒い日が続く中・・・高松のN嬢からのご紹介で新しいギャラリーとの打ち合わせが上手くいって・・・結局彼女を外で長い時間待たせてしまったけれど「ホテルで呑んで下さいね・・・」節分の粋なおやつの詰め合わせと小さな日本酒まで手渡すと彼女は笑いながら帰って行った。お世話になりました。さぁ、お陰で神戸での日程も決まった!翌日の飛行機は遅い出発・・・最後に良い映画はないかと探す内、何とあのビクトル・エリセの映画「エル・スール」をやってるという。良かった‼三十年ぶりにまたこの寡作な監督が映画を撮って、その新作上映に先駆けての「エル・スール」だった。あれは私がまだ30代初め・・・処女作「ミツバチのささやき」に魅せられて次作、待望の映画「エル・スール」だった。子供達が祖父宅へと泊まりに行った日に私と夫はこの映画を観に出かけた。当時4人の子供達もまだ幼く、私は目まぐるしく家族の生活に追われていた。夜は帰宅の遅い夫を待ち付き合い、寝るのは何時も深夜2時過ぎ・・・毎日4時間余りの睡眠で家事を熟すのが日課だった。今で言う育メンなど言うに及ばず「俺に迷惑を掛けるな!」とばかり、あの頃の夫は私には手厳しく拘束も大きかった。そんな状況だったので待望の映画だというのに私はその映画を観ながらこくっとしたらしい。横目で夫はその気配を察知、それが彼には許せない!「あなたはこんな映画を観て居眠りが出来るのか‼」そう私を侮蔑し、憤慨し怒り、そのまま夫は上映途中で帰って行ってしまった。そんなことで映画館を出る⁉「俺より先に寝てはいけない。俺より後に起きてはいけない・・・」彼が嫌いな歌い手の歌詞であるけれど・・・彼は正にそうだった。あの当時、彼のあまりに無謀な要求に追い詰められた私の啖呵「女は寝ないとでも思ってるの‼」そんな台詞を良くほざいたっけ。その後二人ビデオでそれを観たものの「エル・スール」にはそんな思い出が付随しています。まぁ、私達夫婦の歴史は闘争の歴史でもあります。専制君主の領主に泣きながら素手で向かい、やがて自由?を勝ち取った・・・否、勝ち取った上にその途上で培われた豪腕が今の私を作って行った⁉飼い慣らされた傲慢虎は今はただの我が儘な猫!楽なもんです。旅先の映画館のシートに身を沈め「エル・スール」を観ながら・・・私達のそんな若い時間が懐かしく思い出されました。

今はまた新たな作品作りでアトリエ漬け・・・ここに入ってしまうともう夢中になってしまう。そして・・・お疲れが溜まって今日はお休み⁉です。ちょっと前のお疲れの時・・・私に大甘のS姉からまたどんとお魚が届いたっけ。有り難いことです。展示会まではまだ一月の猶予がありますねぇ。寒波に震えた後、季節外れのぽかぽか春もどき?!に我が家のミモザが黄色い花をゆさゆさ揺らしながら一気に咲いてしまった。だから・・・もうあの幸福なミモザは終わってしまったけれど・・・今はまだあそこそこの春の足音に耳を傾ける余裕があるのです。

今は遅咲きの椿満開・・・ぽたぽたと重い花びらを落としながら日の光を浴びています。この海辺の家に越してきて30年余り・・・家を一歩出れば遠浅の海がひろがり、季節ごとに植えた木々に花が咲き小鳥が啄に訪れる。こんな何でもない幸福を突然奪い取られた人達がいるというのに・・・それでも春は律儀にやって来る。せめてこの暖かさが人の温もりに繋がりますように・・・。

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