昨年は「今帰って来たって何処にも行けないよ」の私達の忠告…今年コロナ禍４年目に入りうっすらとグレーゾーンとなってようやくパリに暮らす長女夫婦が念願かなっての帰国。こちらはその間も彼女とも携帯のビデオ電話で話してるせいか、そんなに長い間会ってない気はしないけれど…青春を過ごした異国で再び暮らし始めた娘にとってはやはり満を持して念願の里帰り！なのでしょう。私の方もその帰国に合わせ仕事をセーブして地元で待機です。けれど急遽入った地元での仕事に加え、今年展示会をやらない場所からのオーダーが・・・彼女らが来るまでにやらなきゃいけない事山積です。

何だかんだしている内に彼らが帰国する直前になって東京へ材料調達へ！この春はゆっくりのはずが仕事を詰めて結局走り回る日々に。３月大阪の展示会の際、思わぬ朝の渋滞に巻き込まれ飛行機に乗りそこなった経緯があるため、今回は十分に時間に余裕を見て家を出たものの、飛行機は雷雨で遅れた上に旅先では絶対出需品の携帯の方をまた家に忘れるという失態！昨年春の高松の展示会の悪夢再来です。今どき携帯がないとどんなに不便なのか身に染みて実感したはず！なのにです。さりとて中途半端なこの待ち時間で家までの往復の時間はないし、観念して空港の公衆電話から夫に携帯をホテルへ送ってもらうよう要請…「彼奴ときたら・・・またこれか！」ぶちぶち小言を言いながら郵便局まで自転車のペダルを踏む夫が目に浮かびます。さて私の方はというと・・・さぁ大変だ！家を離れると全てが携帯頼り！直前に予約した安いホテルさえ「名前なんだったけ、何処だったっけ…」これ以上夫に聞けば彼はもうパニック！雷が落ちるのが関の山で何の解決にもならないのは合点承知だ。空港ロビーの待ち時間に隣に座った方に訳を言って、ちょっと人様の携帯を拝借！記憶を頼りにホテルにさえたどり着けば後はどうにかなるだろう…といい加減女はいい加減に事態を端折ります。良かった！思い出したホテルの名前…そのホテルのある池袋は今まで縁がなく土地勘がなかったのですが地下鉄を降りてすぐだった！それから三日間携帯なしで東京を彷徨うことになりました。昔は街角の何処かにあった時計すらない！だから何時か分からない！また友人たちの電話番号だって携帯に記録したっきりでもう手帳に書き込むこともなく…だから連絡の手段もない。今の時代…携帯がないということがいかに大変かを思い知りました。

守備万端のつもりで予約した安ホテル！行って気が付いたのだが貸しアパートメントスタイルで日本語の覚束ない係員にぽんと鍵を渡されて…フロントに行ってパソコンで色々調べれば何とかなるさ…と思惑が外れたのは想定外！泊り客はほぼ外国からの旅行者らしい。本当に誰とも電話もできず、したがって友人らとの「じゃぁ、着いてから電話するね…」の大まかな約束は全てすっぽかし！まして行きたい展示会など何かを調べるってことも出来ず…勝手知ったる材料店を巡っただけ。一応それら専門店は通いなれた場所で肝心の材料は手に入れたけれど…面白い居酒屋にも展示会にも行けず映画も観ず…東京で何してんの？って感じですか。

滞在最後の日の午後になってようやく夫に送ってもらった携帯の到着でせめてと慌てて上映映画探し！楽しみな上質な映画なんてこんな大きな街でしか観れないのに何てこった！・・・けれど観たい映画は今からだと何処も全部時間が半端で、辛うじて自宅へ帰る日の午前中に新宿のシネマに駆け込む。これしか観ることはできなかったのだがイタリアの「帰れない山」…何時もながらちらほらの観客の中、シートに深々と身を沈めれば久しぶりの大画面と音響での臨場感・・・やはり良いなぁ！２時間余りの異次元へのエスケープです。これでこそ一人旅の醍醐味！ホテルのベッドに寝転がって本を読み、何時もならばミニシアターで田舎では観られないマイナーな映画観てその余韻のままに見知らぬ街の居酒屋で・・・美味しい時間です。けれど今回は携帯なし！しかも予約したのがホテルという名のアパートメント！だからパソコンも無し！ときた。けれどこれはこれで案外良かったのかも！３日間猥雑な社会と遮断！雑音なしでお陰でゆっくり時間が流れました。

東京を出る日…パリの娘夫婦はもう日本に到着しているはずだ。今頃は夫のチクリで「ママ、また携帯を忘れたらしいよ」が家族lineで飛び交い皆鼻で笑ってるだろう。だから家族の誰も連絡とれぬまま・・・今頃神奈川の末娘宅で帰国組と積もり積もった話をしているだろう。彼らはこれから東京に５泊・・・そして我が家に10日ほどいて、その後岡山に移った息子夫婦を訪ね最後に10年暮らした神戸に寄って…と、コロナを機にそれぞれ移り住んだ弟姉妹の家を全部訪ねて大忙し！彼らの三週間のバカンスの始まりです。

さぁ、帰ったら忙しいぞ！大掃除して花を飾って彼らの到着を待とう！